2014年9月14日日曜日

関西大会2014


こんにちは。駒場研究会7期会長を務めております、東京大学文科一類2年の矢倉康平です。

本日は、818日から20日にかけて行われました、模擬国連関西大会についての報告をさせていただきます。

関西大会は、日本で行われる大規模な全国大会の1つであり、全国から多くの大学生が集まって熱い議論を繰り広げます。今年の関西大会は神戸のポートピアホテルで行われました。

参加者は、サイバーテロ、政治腐敗の予防と対応、南スーダン情勢、持続可能な森林経営、安全保障理事会における衡平な代表性に関する問題、満州事変への対応、という6つの議題に分かれて会議に臨みました。

私は南スーダン情勢の会議にアルジェリア大使として参加しました。この議題は、昨年末に勃発した南スーダンの内戦にどう対処していくかというものでした。この会議の特徴は、議場が国連ではなくアフリカ連合(AU)であったこと、そして時間の経過とともに内戦の状況が刻一刻と変化していく臨場感のあふれる会議(いわゆるクライシス会議)であったことでした。参加者は、次々と舞い込んでくる事態の変化に翻弄されながらも、アフリカ大陸としての答えを見つけ出していくという、ハードながらもやりがいのある会議行動をすることになりました。

ここから少しだけ会議の内容に踏み込みます。
アルジェリアの立場は、ごく簡潔にいうと外からのあらゆる干渉を嫌うというものでした。南スーダン情勢においても内政不干渉を貫く立場であり、軍事行動による対処を主張する国々としばしば対立しました。事態の悪化に伴い、途中で軍事行動を容認せざるを得なくなるなど苦しい会議運営を迫られましたが、アルジェリアとしての国益は十分守ることができたと感じています。アルジェリアとしては、会議冒頭で南スーダンの現政権の正統性を確認するという会議行動ができたことは、その後の会議の円滑な進行に貢献したばかりか、アラブの春の影響による政権の転覆を恐れているアルジェリアにも利するものだったと評価しています。
ペアが新メンであったため、立ち交渉をペアに任せたうえで私は全体議論に終始参加しました。会議の進行に関しては、中立的に会議を主導しているように見せかけて実は自国に有利に進める、ということを心がけました。展開の早い今会議において、ペアとの調整をこまめに行うことができたのは非常に大きかったと思っています。

昨年の関西大会で南スーダンの大使を務めた経験から、この会議は私にとっては特別なものでした。大使を担当した際に直視することとなった南スーダンの国民の困窮、内戦によってさらに悪化したこれに対してどのような答えを見出していけるのか、常に自問し続ける準備期間、そして大会の3日間でした。ともすれば自分とは関係ないと思いがちな遠い国での内戦をじっくりと見つめることができたことは、結果的にべスデリをとることができたという会議の成果より大きな収穫だったかもしれません。また、ペアに対して私がこれまでに模擬国連で得たものを大部分教えることができたことも大きな収穫であると感じており、彼女の今後の成長のきっかけとなることを願っています。

駒場研究会会員は、べスデリ3つを含む多くのアワードを獲得したこともあり、今関西大会において自分の能力をいかんなく発揮してくれました。もちろん不本意な結果に終わってしまった会員もいるとは思いますが、普段の駒場研究会の会議とは異なる環境において会議に参加することで、会員がそれぞれ様々な刺激を得ることができたでしょう。こういった刺激は、今後の模擬国連活動や将来に間違いなくいい影響をもたらしてくれると信じています。そして何よりも、会員皆がこの関西大会を精一杯楽しんでくれたのではないでしょうか。

このあたりで関西大会の報告は終わらせていただきます。まだまだ今年の駒場研究会の活動は続くので報告を楽しみにしていてください!

2014年9月3日水曜日

前期会議

こんにちは。東京大学教養学部文科一類2年の北村光です。

本日は、私が伊藤龍一と共同で会議監督を務めました、前期会議についてご報告させていただきます。

前期会議は、会議テーマとして「国連ってなんだろう」を掲げ、民間軍事会社(PMSC)を問題として取り上げました。

民間軍事会社は、戦争・軍事にまつわる様々な業務を行っています。国連も、PKO派遣の際などに間接的・直接的に民間軍事会社を使用しています。

それに伴って、民間軍事会社による人権侵害が引き起こされているという問題があります。例えばイラクにおける捕虜の虐待や、ボスニアにおける大規模な人身売買などです。ボスニアの例では、国連も民間軍事会社の行為を黙認していたと言われます。

しかしながら、民間軍事会社は国際法による規制を受けておらず、人権侵害行為を裁く有効な手立ても存在していないと言えます。

今回の前期会議では、議場を「国連総会第3委員会」、議題を「人権を侵害し、民族自決権行使を妨害する手段としての民間軍事会社の使用」と設定し、民間軍事会社の引き起こす人権侵害行為を規制・訴追する方策を議論しました。

会議中においては、私北村光が報告者(国連事務局への議論の報告を任務とする。会議中においては、便宜上議事録作成を担当した)を、伊藤龍一が議長を、中村裕太が秘書官を務めました。

この議題は、実際に第3委員会で話し合われている「人権を侵害し、民族自決権行使を妨害する手段としての傭兵の使用」という議題に根ざしており、民間軍事会社の傭兵的な活動によって引き起こされる人権侵害行為を国際法で規制することを望む社会主義国・第三世界国を中心とした規制派グループと、民間軍事会社と傭兵を峻別し、あくまで民間軍事会社を合法的な存在と捉える欧米・先進国を中心とする反規制派グループの間での激しい対立が見られます。

このような対立構造の中、細かい政策ベースでの議論ではなく、「新たな国際規範の定立」という大きなゴールを目指して戦略的に動くこと、そして、実際の国連総会の政治・外交のダイナミクスを体感することを会議参加者たる大使には期待しました。

実際の会議においては、規制派・反規制派の入り乱れた安易なグルーピングや、枝葉の政策議論、今までの決議の読み込み不足による自国の立場の誤解、本音と建前の意識不足などにより、必ずしも納得できる結果には至りませんでした。

規制派にとっては、「国際法による民間軍事会社の規制をするべきだ」という規範の定立から遠ざかり、反規制派にとっては、「民間軍事会社はそもそも傭兵とは全く異なるものだ」という規範の定立から遠ざかる、という会議結果となったのでした。

しかしながら、会議の振り返りを通して、会議テーマである「国連ってなんだろう」を意識する良い機会となったのではないかと考えます。国連総会では何が行われるのか(模擬国連会議においては、便宜上、総会でも枝葉の政策議論が行われることが往々にしてあります)、国際規範の定立を目指す会議を通じて真剣に考える機会となりました。また、民間軍事会社という国連も使用する存在を考察することを通して、絶対的な正義に見える国連ですらも人権侵害に携わることがあるのだということ、国連はあくまで加盟国の意思の総体に過ぎないことなどを意識できたのではないかと思います。

今回の前期会議を通して、国連というものをより深く考え直し、今後の模擬国連会議に活かせる経験ができたのであれば、会議監督として幸いです。

東京大学文科一類2年

北村光